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いる。「野戦病院のベッドのようだ」「毛布の畳み方が面倒だ」「食事の選択の余地がない」などの声は、青少年教育施設に勤務した経験のある職員が一度ならず利用者に聞かされたことではないかと思う。引率者にしてみれば「安いのだからガマンさせよう」というように自らを納得させ、研修プログラムの充実のみを心掛ければ事足りるという意識を往々にして持ちやすいきらいがあるし、施設職員の側にも、安く利用できるのだから過大な要求を出されても困るという意識がある。さらに、引率者の側にも施設職員の側にも、管理するという形によってさまざまな面倒が省けるという安易な気持ちが、時として見られることがある。これが利用者、特に“連れて来られた”という立場の青年にはたまらない。先程も述べたが、現代の青年の趣向(快適さ・豊かさの追求)と、その生い立ちのゆえに青年の家が宿命的に持っている機能(ソフトやハード)の間には大きなギャップが生じている。これからの青年の家がめざす改革の中で、重要な視点の一つとして欠かすことができないのは、大規模集団的対応(画一的・訓練的な性格)から、小規模グループヘの対応(個別的・自由・快適性・プライバシー重視)をも考えた、きめ細かい配慮である。
昨今の青年の生活ぶりからも、安価で利用できるというだけでは魅力に乏しいということが容易に想像できる。研修施設が充実していることは当然のことであるが、生活関連施設の充実とグレードアップの重要性が今後ますます求められていくものと思われる。すなわち、研修以外の時間をいかに快適に過ごすかということが大きなウエイトを占める時代になっているということである。
具体的には、既成概念をとりはらい、限りなくホテルに近づけることが考えられる。個室化や豪華さ、くつろぎの空間、コンドミニアム形式の採用などはを長期的な視野に入れつつ、短期的にはきれいなトイレやいつでも利用できる温水シャワー、国際電話が可能な公衆電話、利用者が自由に使える情報端末などの設置・整備が考えられるのではないだろうか。
青年の家は、とかくさまざまな団体に対応することを中心に考え、ややもすると「帯に短しタスキに長し」という傾向が無きにしもあらずであったが、やはり今後は“良質”ということを考えていかなければならない。コピー文化が全盛だと言われるが、そんな時にこそ“本物”の持つ魅力は大きいと思う。プログラムも指導者も、そして建物も、ぜひ“本物”で勝負してほしいと思う。

 

第3条 健康診断をしよう
何かが起こってからでないと対策をたてないというのは、いわゆる「日本のお役所仕事」の悪しき伝統として、自然災害や大事故などなどの際によく言われていることである。まあ、自然災害や大事故とまではいかなくとも、物事がうまくいっている間は、うまくいっているがゆえに方法や流れを極力変えないのが普通であり、あまり悪くなったときのことを考えないものである。しかし、これは道なのではないだろうか。組織・施設が元気がある時にこそ改革を考えなくては何事も手遅れになりはすまいか。勢いが下り坂になってから、あわてて対策を講じても、結局はその場しのぎの対症療法にすぎない。それを積み重ねていくうちに、利用者に物足りなさや不満感をいだかせ、結局のところリピーターとなるべき利用者に逃げられてしまう結果に終わることが多いのではないか。それ

 

 

 

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